
キアヌ・リーブス「ぼくから喧嘩はふっかけない。ジンさえ飲まなければ(笑)」
『ギフト』は、キアヌ・リーブスのフィルモグラフィのなかでもかなりの異色作だ。主役でないばかりか、演じるキャラクターもDV男なのだ。キャリアの絶頂期に、あえてこのサスペンススリラーの傑作を選んだのはなぜなのか?
「稼いだ大金を何に使っているの?」という不躾な質問も飛び出した、2000年12月10日の記者会見をお届けする。
同じ役柄ばかりを演じていたくない
──今回は、ジャンルも役柄もこれまでの作品と一線を画します。
(略)
──映画の中で妻に暴力をふるう場面では、どのように気持ちを高めていましたか。
たいていは、妻がぼくの言う通りにしなかったからぶん殴る。
クレイジーで病的なコミュニケーション方法のひとつとして。実際は、男性を殴るのとは大違いで、つくづく演技で良かったと思う。
心を強く動かされて、奇妙だと思った。他人を身体的に支配することは、感情に強く訴えてくる。陶酔させるなにかがあるんだ。とても残酷でろくでもない行為であるのは言うまでもないけれど。
だけどおかしなもので、セットにいた女性の多くが、ドニー・バークスデイルというキャラクターに好意を抱いていた。本当に彼のことを気に入っていたんだ。暴力にもなにかしらの魅力があるのかもしれない。よく分からないけれど。
──あなたが演じていたからじゃないですか?
ぼくにはわからない。このキャラクターに惹かれていたんだと思う。実生活ではどうかはわからないけれど、映画のなかのあのキャラクターに惹かれていた。ドニー・バークステイルに、なんらかの魅力と恐ろしさを感じるのかも知れない。
これはカップルのあいだで実際にあることで、暴力のあとに最高のセックスを経験することもある。女性が服従し、男性が支配することが、なんというか……
──興奮に繋がる?
うん。それこそが、DVカップルの堕落した部分だ。堕落というか、原始的な部分というか。とても野蛮な暴力の輪というやつだ。男性が支配して服従させ、女性はそこから抜け出すことができない。動物的な意味ではすごく情熱的だけど、残酷で、ひどいことだ。
日常生活では、
誰も傷つけないことを常に心がけていている
──このキャラクターはひどい行為をおこないますが、同時にものすごく正直です。南部の男性に共通する気質なんでしょうか?
南部紳士の掟というものが存在するけど、彼がそれを実践していたのかどうかはわからない。でも、このキャラクターが面白いのは、言いたいことを言い、感じるままに感じるところだ。
この映画において、葛藤を抱かず、何にも抑圧されていない唯一のキャラクターと言える。他の人たちはみんな、悲しんでいたり、誰かを亡くしていたり、混乱していたり、抑圧されたりしているから。ドニー・バークスデイルはクレイジーだけど、とてもまっすぐなんだ。
──あなた自身は暴力に対してどのように反応しますか? 萎縮するタイプですか、それとも暴力で対抗するタイプですか?
場合による。どちらも経験したことがあるよ。もともと、ぼくのほうから喧嘩をふっかけることはない。ジンさえ飲んでいなければ(笑)。
──(笑)。
同じような経験をした人はいない? ジンを飲んでクレイジーになるという。ハッピーだったのに、ジントニックを2杯飲んだら、突然「ガルルル……」って唸り声を上げてしまうという。
ただ、普段のぼくは喧嘩を求めていない。日常生活においては誰も傷つけないことを常に心がけていて、いまでは完全にその考えに感化されている。
(略)
https://news.yahoo.co.jp/articles/86fd4bb717d737e0998343caf3befc8522dc0755