
中国人の目に英国が「衰退した貧しい国」と映る理由
中国人が憧れる英国の現実
これまで2週に渡って英中間の国家戦略を見てきたが、今回は一般の中国人の「対英観」を取り上げてみたい。果たして、現在の英国は中国人の目にどのように映っているのだろうか。
筆者は、上海市出身の宋敏さん(仮名・男性・50代)から話を聞いた。
「中学生の英語のテキストに、英国の紳士・淑女が描かれるパートが出てきます。それが初めて知る英国でした。私たちにとって英国は憧れの国でした」
その宋さんが「これは友人から聞いた話だ」とし、英国人に嫁いだ女性の話をしてくれた。彼女は結婚した英国人の夫に連れられ、英国のある地方都市を訪れた。
家に足を踏み入れると、暮らしぶりは決してよくないことは一目でわかった。そのときの印象を、彼女は宋さんに「その貧困さときたら、それはひどいものだ」と語ったという。
続いて彼女は、夫の妹の家を訪れた。そこで見たものは「夫の実家を上回る貧しさだった」という。
確かに英国は、先進国といえども地方都市は財政難を抱え、決して潤っている状態ではない。
特にイングランド北部は、重厚長大産業からの構造転換に乗り遅れ、財政再建の課題を背負う都市もある。
国民の生活も、金回りのいいロンドンを除けば、決して良好な状態にあるわけではない。宋さんは次のように語っている。
「ロンドンは、確かに金融面では世界の中心ですが、金融だけでは雇用が広がりません。こうしたことが背景にあるのか、英国人の職探しは中国にも及んでいます。私の友人のように、中国人の女性と結婚するケースも増えているのです」
英国は、かつての「大英帝国」の発展に裏付けられた伝統と自信が、今なお国を支えているといえるが、中国人にとっては"すっかり衰退してしまった国"と映るようだ。
一昨年、英国を訪れたという、中国の外資系企業管理職の中国人女性に印象を尋ねた。彼女もまた同じようなことをコメントしていた。
「『貧しい』の一言に尽きます。都市部は物価が高い割においしいものがない。地方都市には美しい庭を持つ家が多いけれど、お金がないから"庭いじり"くらいしかできないのでは?」
英国は「富国」ではなく「腐国」
ロンドン滞在中には、こんなブラックジョークも耳にした。
「中国人からすれば英国は『富国』ではなくて『腐国』だ」──。
日本語でもそうだが、中国語でも「富」も「腐」も「fu」と発音する。だが、この同音異義語が持つ意味は、天と地ほどの差がある。なぜ、彼らは「そこまで言う」のか。
ロンドンに限っても、確かに建物やインフラの老朽化はあちこちに見られる。地下鉄の駅舎を見ても、東京メトロ銀座線・浅草駅のような「昭和チック」な駅舎がむしろ標準だ。
レンガ積みの壁に、木製の古びたベンチ…。だが、風化したそのたたずまいにこそ、思わずカメラを向けたくなるような美しさがある。
しかし、旅行者にとって、それは「価値」であっても、居住者にとってはそうでない場合もある。現にこの地下鉄には「不便」を訴える声は少なくない。
一部では車両の車高の低いものや、いまだエアコンが据え付けられてない路線もある。遅延も少なくない。
http://diamond.jp/articles/-/156388