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「コンビニおでん」を毎年真夏に売り出すワケ
じわり縮小するおでん市場、各社の工夫とは
「おでんや中華まんは、冷夏といえる今の状況が追い風になるだろう」。ファミリーマート商品本部の島田奈奈・ファストフーズ部長はそう語る。
8月に入り、コンビニエンスストア各社が今シーズンのおでんの本格展開を始めている。8月8日に販売を開始したローソンを皮切りに、15日にはセブン-イレブン・ジャパンが、22日にはファミリーマートがおでんを発売する。例年、コンビニでは真夏の8月におでんを売り始め、翌年春まで店頭のレジ横に並ぶ。
実は、コンビニのおでんが最も売れるのは9月~11月だ。”冬の定番”といえるおでんなら、最も寒くなる年末年始から2月ごろにかけて売れると思えるが、実際には秋口に販売のピークを迎える。
この時期は「少し肌寒くなった」などと感じる季節の変わり目だ。急な体感温度の変化によって、消費者の手がおでんに伸びるのだという。実際、こうした消費者動向を反映する形で、コンビニ各社は毎年8月には商品を投入し、9月以降はテレビCMを放映するなどの積極的な販促に打って出るケースが多い。
だが、近年はコンビニおでんの市場そのものが伸び悩む。ファミマの調査によれば、2016年度のコンビニおでんの市場は413億円と前年比で66億円減少。「お鍋と言っても、(キムチ鍋や豆乳鍋など)鍋の味の種類が増えたり、野菜を食べたいというニーズが増えてきているため」と島田部長は分析する。
そこでファミマは2つの挽回策を講じる。一つ目は、効果的な割引販促の実施だ。例年、コンビニ各社は「70円セール」と銘打ったおでんの割引セールを実施する(通常は100円前後)。ファミマの場合、昨年は年間で合わせて約10日間、70円セールなどの割引キャンペーンを行った。
これまでのセールは売れ行きの良くない時期に集中させ、年間を通して売り上げを平準化しようとしていた。だが、今年については「お客さんがコンビニおでんを食べたくなる、9月~11月の時期に安くする」(島田部長)という方針を掲げ、販売ピーク時に集中的に需要を喚起していく。
一方で販売が落ち込む冬場でも、積極的な新商品の投入で売り上げの減少に歯止めをかけたい考えだ。ファミマは9月以降、毎月3~4アイテムずつおでんの新商品を投入する。
経営統合したサークルKサンクスの人気商品だった、こんにゃくや焼きちくわなどを串刺しにした「屋台風おでん」などで、新味を出す。セールだけに頼らないおでん戦略を描いている。
おでんに力を入れるのは、競合他社も同じだ。店舗数、日販(1日当たりの1店売上高)で業界トップに君臨するセブンは、定番商品の強化にこだわった。
隠し包丁や製法、スパイスで差別化
コンビニおでんの売れ筋トップ3は、大根や玉子、白滝だ。セブンは今年、「具材に味をしみさせる」点に主眼を置く。大根は「隠し包丁」の切り込みを昨年よりも深くすることで、中心部まで味をしみやすくした。
白滝にも一工夫を加える。スリット製法と呼ばれる複数本の白滝を1本にまとめる製法を進化させることで、白滝の表面積を増やした。白滝をつゆと絡みやすくして、味の向上を狙う。
9月から12月にかけて毎月1品ずつの新商品を投入する予定で、9月には鶏肉のつくねをブラックペッパーで味付けした「ブラックスパイス鶏つくね串」を販売する。昨年よりも串のサイズを短く変更したうえ、おでん容器も大きくすることで、串おでんを容器に入れやすくする。
ファミマの島田部長は、「先行販売を始めた一部店舗での売れ行きは好調だ。おでんの販売で前年比1割増を目指す」と意気込む。新商品や定番品の刷新で、消費者の支持をどこまで広げられるか。
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