http://web.mit.edu/newsoffice/2012/prolonged-radiation-exposure-0515.html ●MITのBevin EngelwardとJacquelyn Yancの行った研究で、原子力施設での事故などに依る低レベル放射線の被曝について、
住民の避難を行わせしめる規制は現在の米国政府の決めている基準が厳しすぎるものであることを明らかにした。
両氏は、この研究結果を医学ジャーナルのEnvironmental Health Perspectivesに発表した。
論文は→
http://ehp03.niehs.nih.gov/article/fetchArticle.action?articleURI=info%3Adoi%2F10.1289%2Fehp.1104294 ●この研究では、マウスに通常のバックグラウンドレベルの400倍の放射線に5週間被曝させたあと、DNAの損傷が検知できない
事を報告している。現在の政府の規定では、バックグラウンドの8倍以上の放射線のある環境では、住民を退去、避難させなく
てはならない。しかし、そうした退去は金銭的にも感情的にもコストが大きいと研究者は述べている
●MITの原子力工学部門のシニア講師であるYanchは「危険なレベルの放射線がというのが、どういう値であるかを示す
データがこれまで存在しなかった」という。「この研究で、平均的バックグラウンドの400倍の被曝があっても、遺伝子的に
何の被害もないことが解った」「原子力発電所の事故とか、核爆発の在る地域などで、数百或いは数千人が避難、
退去すべきかを判断するような場合に、この研究は大きな影響を与える可能性がある」
●これまでは長期にわたる低レベル被曝の影響についての研究はなかった。この研究はバックグラウンドの400倍のレベル
(これは毎分0.0002センチグレイ、あるいは年間105 cGyに相当)での遺伝子の損傷について調べた最初のものである。
●「殆どすべての放射線被曝の健康に対する研究は、短期間の被曝についてのもので、それは長期被曝とは異なった
生物学的影響を与える」とMITのバイオロジカルエンジニアリング部門の准教授であるEngelwardが述べている。
●通常のバックグラウンド放射線のレベルというのは宇宙からの放射線や自然界のアイソトープに依るもので年間 0.3 cGy
に相当する。以前の研究では、 10.5 cGyの放射線を一時期に浴びるとDNAの損傷があるとされた。
しかし今回の研究は5週間にわたって、日本の福島原子力発電所で起こったのと同じレベルの被曝を与えている。
5週間の被曝の後で、研究者は最も鋭敏な手法でDNAへの悪影響を調べたが、DNA構造の塩基障害やDNA螺旋構造
の破壊などのDNAへの損傷は検知できなかった。
●DNAの損傷はバックグラウンドレベルの放射線でも発生するもので、その確率は一日、細胞あたり10,000 changesで
あるが、殆どの損傷は修復される。研究者は、今回の調査で与えたバックグラウンドの400倍の放射線で、追加的に
一日あたり、細胞ごとに1ダース程度の塩基障害が発生すると見ているが、それらは明らかに全て修復されている。
●日本の福島原子力発電所の事故では10万人の住民の退去にもかかわらず、日本政府はより多くの人を退去させる
べきだったと非難されている。我々の研究によれば、それらの住民が退去しなかった場合でもDNAへの過剰な損傷は
発生しない。この結果は我々の研究所が最近開発したDNA損傷を測る手法によって示すことが出来たものである。