新曲「ダイナマイト」がビルボード1位 BTS(防弾少年団)の愛される理由は?
2020年9月23日
世界的に人気がある韓国の男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」の新曲「ダイナマイト」が、8月31日発表の米ビルボードチャート「ホット100」で1位を獲得した。東アジアの歌手では、1963年の坂本九さんの「SUKIYAKI(邦題・上を向いて歩こう)」以来、57年ぶり。人種や文化の枠を超えて愛される理由を考えた。 (ソウル・相坂穣)
◆コロナ禍に元気と慰め届ける
♪今夜、僕は星の中にいる 僕が火花で夜空を照らすのを見て ファンクとソウルで街を輝かせるよ。
BTSが初めて全曲を英語で歌った「ダイナマイト」の歌詞を和訳すると、ラップで社会批判なども織り交ぜた従来の曲に比べ、メッセージ性をあえて抑えた印象を受ける。
「新型コロナウイルスの危機の中で苦しむ大衆に、陽気なディスコ風のリズムとメロディーによって、元気と慰めを届けた」。韓国の大手スポーツ紙「スポーツ朝鮮」歌謡担当記者の白ペク智恩ジウンさんは解説。「米国のラジオは非英語圏の曲に対して排他的な傾向が強いが、ダイナマイトは英語の歌詞で、障壁を越えて消費されやすくなった」とみる。
◆下積み時代からオンライン活動重視
80年代風のダンスファッションに身を包んだメンバーたちが、ディスコやドーナツ店が並ぶレトロな街並みの中で軽快に踊るビデオの効果も大きい。未知のウイルスとの闘いで、外出や旅行を制限されたファンたちにとって、ビデオでメンバーが躍動する姿は、外の世界とのつながりを疑似体験できる媒体となった。
BTSは、所属事務所が韓国芸能界で非主流なため、下積み時代はテレビ出演などの機会が限られ、会員制交流サイト(SNS)やユーチューブなどオンライン上の活動を重視した。そこで培った「アーミー(軍隊)」と呼ばれるファンとの関係が、新型コロナの防疫でライブなどが制限された状況で生きた。
◆人種差別問題を機に「多様な文化を受け入れやすく」
ビルボードのホット100は、シングル曲について、ダウンロードや放送回数などを総合評価して順位を付けるチャートの最高峰だ。歴代1位は、マイケル・ジャクソン、マライア・キャリー、エルトン・ジョン、エミネムなど英語圏のトップ歌手の名曲が並ぶ。
「BTSが、Kポップの特定のファン層を対象にしたものでなく、世界のポップの主流になった」。大衆音楽評論家の金キム泰勲テフン氏は、欧米の音楽界を席巻してきた白人や黒人ではないアジア人の快挙に注目する。
背景には、米国で今年5月、黒人男性が白人警官による暴行で死亡した事件を機に、人種差別問題が注目されていることがある。「これまでアジアなど他地域のスターに好意的ではなかった白人の少年少女が今、人種主義を脱して多様な文化を受け入れようという雰囲気がある」
BTSは18年、国連総会で「肌の色、ジェンダーに関係なく、自分を語ろう」とスピーチしたことがある。今夏も人種差別反対運動の支援のために募金を呼び掛け、100万ドル(約1億円)以上を寄付していた。
◆避けられぬ徴兵…免除を訴える声も
人種差別やコロナ禍など世界の分断に向き合う同時代の若者の願いを代弁するようなBTSだが、韓国人青年として避けては通れない宿命も背負っている。徴兵制だ。
韓国の18歳以上の男子は原則、約2年間の兵役を義務付けられている。今年12月に最年長のメンバーが入隊期限の28歳の誕生日を迎える。
五輪などで活躍したスポーツ選手などが兵役を免除される規定があり、BTSについても免除すべきだとの声が出ている。今月3日には、与党「共に民主党」国会議員が芸能人への特例を認める法案を提出したが、韓国社会は「兵役回避」に厳しく、徐ソ旭ウク国防相も「国民的な共感が先行しなければならない」と慎重だ。
BTSのメンバーたちもかねて「兵役は当然の義務」との立場を表明している。7人勢ぞろいのパフォーマンスは本当に、しばらく見られなくなってしまうのだろうか。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/57177
2020年9月23日
![東京新聞「なぜ防弾少年団はこんなにも世界で愛されているのか」 [疣痔★]YouTube動画>1本 ->画像>2枚](https://static.tokyo-np.co.jp/image/article/size1/2/a/a/6/2aa63445cf47c172a004ceeb1923a6de_1.jpg)
世界的に人気がある韓国の男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」の新曲「ダイナマイト」が、8月31日発表の米ビルボードチャート「ホット100」で1位を獲得した。東アジアの歌手では、1963年の坂本九さんの「SUKIYAKI(邦題・上を向いて歩こう)」以来、57年ぶり。人種や文化の枠を超えて愛される理由を考えた。 (ソウル・相坂穣)
◆コロナ禍に元気と慰め届ける
♪今夜、僕は星の中にいる 僕が火花で夜空を照らすのを見て ファンクとソウルで街を輝かせるよ。
BTSが初めて全曲を英語で歌った「ダイナマイト」の歌詞を和訳すると、ラップで社会批判なども織り交ぜた従来の曲に比べ、メッセージ性をあえて抑えた印象を受ける。
「新型コロナウイルスの危機の中で苦しむ大衆に、陽気なディスコ風のリズムとメロディーによって、元気と慰めを届けた」。韓国の大手スポーツ紙「スポーツ朝鮮」歌謡担当記者の白ペク智恩ジウンさんは解説。「米国のラジオは非英語圏の曲に対して排他的な傾向が強いが、ダイナマイトは英語の歌詞で、障壁を越えて消費されやすくなった」とみる。
◆下積み時代からオンライン活動重視
80年代風のダンスファッションに身を包んだメンバーたちが、ディスコやドーナツ店が並ぶレトロな街並みの中で軽快に踊るビデオの効果も大きい。未知のウイルスとの闘いで、外出や旅行を制限されたファンたちにとって、ビデオでメンバーが躍動する姿は、外の世界とのつながりを疑似体験できる媒体となった。
BTSは、所属事務所が韓国芸能界で非主流なため、下積み時代はテレビ出演などの機会が限られ、会員制交流サイト(SNS)やユーチューブなどオンライン上の活動を重視した。そこで培った「アーミー(軍隊)」と呼ばれるファンとの関係が、新型コロナの防疫でライブなどが制限された状況で生きた。
◆人種差別問題を機に「多様な文化を受け入れやすく」
ビルボードのホット100は、シングル曲について、ダウンロードや放送回数などを総合評価して順位を付けるチャートの最高峰だ。歴代1位は、マイケル・ジャクソン、マライア・キャリー、エルトン・ジョン、エミネムなど英語圏のトップ歌手の名曲が並ぶ。
「BTSが、Kポップの特定のファン層を対象にしたものでなく、世界のポップの主流になった」。大衆音楽評論家の金キム泰勲テフン氏は、欧米の音楽界を席巻してきた白人や黒人ではないアジア人の快挙に注目する。
背景には、米国で今年5月、黒人男性が白人警官による暴行で死亡した事件を機に、人種差別問題が注目されていることがある。「これまでアジアなど他地域のスターに好意的ではなかった白人の少年少女が今、人種主義を脱して多様な文化を受け入れようという雰囲気がある」
BTSは18年、国連総会で「肌の色、ジェンダーに関係なく、自分を語ろう」とスピーチしたことがある。今夏も人種差別反対運動の支援のために募金を呼び掛け、100万ドル(約1億円)以上を寄付していた。
◆避けられぬ徴兵…免除を訴える声も
人種差別やコロナ禍など世界の分断に向き合う同時代の若者の願いを代弁するようなBTSだが、韓国人青年として避けては通れない宿命も背負っている。徴兵制だ。
韓国の18歳以上の男子は原則、約2年間の兵役を義務付けられている。今年12月に最年長のメンバーが入隊期限の28歳の誕生日を迎える。
五輪などで活躍したスポーツ選手などが兵役を免除される規定があり、BTSについても免除すべきだとの声が出ている。今月3日には、与党「共に民主党」国会議員が芸能人への特例を認める法案を提出したが、韓国社会は「兵役回避」に厳しく、徐ソ旭ウク国防相も「国民的な共感が先行しなければならない」と慎重だ。
BTSのメンバーたちもかねて「兵役は当然の義務」との立場を表明している。7人勢ぞろいのパフォーマンスは本当に、しばらく見られなくなってしまうのだろうか。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/57177