国立情報学研究所 喜連川新所長の決意 - ZDNet Japan (2013年5月10日)
http://japan.zdnet.com/cio/sp_12matsuoka/35031877/
本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで
明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、国立情報学研究所の喜連川優 所長と、日本HPの杉原博茂 常務執行役員の発言を紹介する。
「ICT分野では今、アイデアドリブンな新サービスが従来にない技術の創出を牽引するという流れができつつある」
(国立情報学研究所 喜連川優 所長)
国立情報学研究所(NII)が4月18日に開いた記者会見で、この4月からNIIの新所長に就任した喜連川氏が
所信と今後の活動について語った。同氏の冒頭の発言は、その会見でICT分野の新しい潮流について述べた
ものである。
喜連川氏は、1978年に東京大学工学部電子工学科を卒業し、83年に同大学院工学系研究科情報工学専攻
博士課程を修了(工学博士)。同年、東京大学生産技術研究所に入所し、2003年、同所戦略情報融合国際研究
センターのセンター長に就任し、現在も同職を務めている。
同氏の専門分野は大規模データ処理で、これまで文部科学省の「情報爆発」プロジェクト代表や経済産業省の
「情報大航海」プロジェクト戦略会議委員長を務めてきた。2009年にはデータベース分野で最も権威のある
ACM E.F.Codd賞を受賞。2010年から東京大学地球観測データ統融合連携研究機構長も務めている。
まさに今、ICTで最も注目されているビッグデータ活用における研究分野の第一人者である。今回のNII所長
就任にあたって、同氏は次のような所信を述べた。
「NIIの使命は、わが国唯一の情報学の学術総合研究所として、情報学という学術分野において長期的な視点に
立つ基礎研究並びに社会課題の解決を目指した実践的な研究を推進することにある。同時に、大学共同利用機関
として大学や研究所を結ぶネットワークの運用、 学術コンテンツ並びにサービスプラットフォームの提供などの
事業を展開・発展させること、そしてこれらの活動を通して人材育成と社会・国際貢献に務めることも極めて重要な
使命だと考えている」
同氏はさらに「世界的にも情報学の研究とITサービス・ネットワーク運用を同時に行っている機関は稀有だ」とし、
「猛烈な勢いで進化する情報学において、実際にシステムを運用することを通じてさまざまなペイン(苦痛)を自ら
体感することは、ICTの流れを肌で感じ今後の研究開発の方向を把握する最も的確な手段であると同時に、
最先端の情報サービスを大学と共創することに大きく資すると確信している」とNIIの活動の意義を語った。
その上で同氏は昨今のICT分野の潮流について「新しい技術がサービスを生むという旧来の構図のみならず」と
前置きし、冒頭のように発言。そうした中で「NIIはさらなる機動的研究体制の実現に努めたい」と決意のほどを語った。
ビッグデータ活用研究の第一人者が所長に就いたNIIが、今後どのような成果を生み出すか、大いに注目しておきたい。